ヴァンガードGを見て思ったこと

全世界の人にヴァンガードGを見て欲しいとまじめに思っている人間が、シリーズを通して感じたこと。
(めちゃくちゃ長いただの感想です/ネタバレあります)






ヴァンガードGって未来への成長の話なんだけど、全体を通してのテーマが「過去」だと思うんですよね。ヴァンガードはカードゲームなので毎回勝負の描写があるけど、反対側にある勝ちたいものっていうのは、結局過去だったのかなと思う。

主人公クロノくんと、裏の主人公である(と思ってる)伊吹さんの、このヴァンガードGという作品での最終的な終着点は、それぞれ過去の自分に勝ったって表せると思ってて。クロノくんはファイナルターンで、周りを巻き込んでしまうんだから何もしなければ良かったのにって言う過去の自分に、自分がしたことに対してもう周りに助けてもらったから、その恩返しとして精一杯生きていくって言うじゃないですか。自分がしたことが結果としてどうなるかはしてみないと分からないけど、悪い結果になってしまうことを考えて何もしないより、例え悪い結果になっても周りに助けてもらいながら、良くなる様に頑張り続けて行くことを選んだんですよね。自分が周りに迷惑をかけてしまうかもしれないから、だったら何もしないで自分一人で生きていこうって決めていた過去の自分に、勝ったっていうことだと思う。
これは伊吹さんも同じで。伊吹さんは自分が過去にしてしまったことへの贖罪としてひたすらにヴァンガードのために頑張っていたけど、自分の行為がどういう結果になるかって伊吹さん自身にも全く確証なんて無かったと思う。むしろ自分にそこまで変えられるって思ってなかったんじゃないかな〜って私は思う。それでも、ちょっとでもヴァンガードの力になりたいって思いで、自分がどう思われるかとか本気でどうでもいい感じで突っ走ってたけど、エクストラターンで、昔を知ってる人たちにも、昔を知らない人たちにも、両方に頑張りがあたたかく認められてた。これって、伊吹さんが過去を超えられているっていうことで、過去の伊吹さんに勝っているということだと思う。

過去を「超える」から「勝つ」っていう言葉を勝手に使ってるけど、なんか作品の中の書き方は、勝つっていうかもっと柔らかい部分もあるのかなとも思っていて。過去に勝つというか、過去は消えないけど何度でもやり直せるってことでもあるのかなって思う。
これはSG編までのリューズさんで考えた事なんだけど、リューズさんが時間を巻き戻されて生き直しすることについて、色んな捉え方があると思うけど、私は「やり直せる」っていうことの表現のひとつだったんだと捉えてる。時間が巻き戻る前に、リューズさんがクロノくんに、「もし同じ歳くらいでお前と会えていたなら」って言ったじゃないですか。完全なる未来がないこの世界の自分に何も思いを抱いてなかったリューズさんに、最後の最後にひとつ生まれたものだったのかなって思ってて、もしかしたらその気持ちを持ったからやり直しになったのかなって私は思ってる。リューズさんはこの時には過去を超えられなかったけど、超えるのを諦めたけど、巻き戻されたこれからで超えられるかもしれない。その機会が与えられたってことじゃないかな。自分が自分に完全に諦めなければ、やり直せるってことなんじゃないかな。

やり直せるっていうのはリューズさんと一緒に世界を変えてしまったライブさんにも言えることなんだけど、ライブさんについてはまた込められたメッセージが違う気がしてる。
父親としてのライブさんの、クロノくんとの関わり方について私の中でまだ消化し切れてないんだけど、ライブさんはやり直すことが託すこととイコールになってる気がしてて、それが親というもののあり方のひとつっていう表し方なのかな…ってぼんやり考えてる。
私は最初父親としてのライブさんに、父親の役割を全部伊吹さんに任せてるってめっちゃ憤慨してたんですけど(…)全編を通してよく考えれば、親としての役割を全うしてると言えると思う。というか、私がもしライブさんの立場だったとして、めちゃくちゃ辛いと思ってしまって怒ることができなくなってしまったんですよね。クロノくんの天性の強いイメージ力って、まあライブさんの遺伝もあるじゃないですか。それが元凶で世界を変えてしまった息子に、辛い記憶を思い出させない様に自分のことも忘れさせるって、私だったら悲しいのと自分が許せないのとで、ほんとどうにかなる。しかも結局クロノくんを導く、本来は自分の役割を伊吹さんに丸投げする以外に無かったんだよね。アニメ最終回近くの頃に、ドランくんがクロノくんたちに会いに行くよ〜っていう回のみにゔぁんを読んで、最後にドランくんがライブさんの所に戻ってクロノ元気だったよ!って言った時に、ライブさんはどんな気持ちだったんだろうなと思って精神が焼き切れた。どんな顔して会えばいいのか分かんねえって言って、結局純粋に二人で話す描写は本当に少なかったけど、本音は小さい頃からずっと側にいたかっただろうなあと思う。想像だけど。
直接的なライブさんとクロノくんの絡みがほぼ描かれなかったのは、話の筋的なのはもちろんあるけど、親は子どもの未来に対して、基本は思いを託すだけの立場っていう解釈してる。そして、ライブさんに関しては特にそうだけど、他のキャラクターについても全体的に、意図的に親というものの描写少なくしてる気がしてて、これは子どもが過去を超えて未来に向かっていくために周りと関わって助けられていくことは不可欠だけど、その役割は必ずしも親という立場の人ではなくていいっていうことかなと私は受け止めてる。クロノくんは伊吹さん、トコハちゃんはマモルさん、シオンくんは岩倉さん、みたいに何となく一番側で見守る役割の人が親の様で親ではないことにも表れてるのかな…とか考えてる。


ヴァンガードGに出てくる人たちはみんな、悩んだり間違えたりしながら、周りの人の力を借りながらでも、そういう過去をちゃんと見つめて無かったことにしないで、過去を超えていくんですよね。自分が何かしたら周りに迷惑かなとか、こんなことして何か意味があるのかなとか、そういうことを一旦置いておいて、やりたいって思ったことや、こう生きていきたいっていうことに向かっていけばいいんだよっていうメッセージなんだと思う。
人間が一番勝てないものって過去だと私は思っているんですけど、だからこそ、過去は絶対に変わらないから、完全なる未来を作ろうとしたリューズさんの気持ちめちゃくちゃ分かる。それはそうなんだけど、でもそうじゃなくて、どうにか頑張って自分で自分らしい未来をつくって行こうぜっていうメッセージ、なんかもう今を生きる人たちみんなへの祈りという感じがする。ヴァンガードは子ども向けのファンタジーアニメという体だけど、受け取るものがすごくリアルで、まさに今を生きている人と一緒に歩いてく様なアニメだと思いました。

私は過去の自分が好きではなくて、過去が変えられないことを心底嫌だと思って生きてきたから、ヴァンガードGを見て、これまでに書いてきた様な解釈をしてすごく救われた。けど、多分人によって捉え方は違うと思うから、たくさんの人に見てもらって色んな解釈を見たいなあ〜と思います。そして、できれば続きが見たい…。